「クトゥルフ神話TRPG」用シナリオ
センタクシ
プレイ人数/2〜4人 シナリオ執筆/L
【あらすじ】
探索者たちは各々の事情で某グランドホテルにやってきた。
しかし翌日、局地的な地震によりホテルは陸の孤島となってしまう。
そんな中で一人の従業員が悲惨な死を遂げた……。
探索者に迫る奇妙な出来事、果たして無事に帰ることは出来るのだろうか?
【シナリオ情報】
これは蜘蛛、基アイホートの雛たちによって起こされる事件です。
雛たちが駆除されることを知ったアイホートは怒り、地震を起こしました。
そして雛たちはアイホートと接触をし、迷宮に帰ろうとします。
この時ホテルにいる何者もアイホートに契約を迫られます。
断れば潰されて死んでしまい、受け入れれば雛を身篭ることになります。
シナリオ中で雛の追放の呪文を修得しない限り、
探索者は結果的に死に至ります。
【導入】
1.ホテルに到着
探索者たちがホテルに着いた場面から開始します。
ロビーに入ると隅のほうで数名の従業員と業者の人たちが揉めています。
聞き耳に成功すると「そんなことをすればあの方が怒ってしまう!」という従業員の声が聞こえるでしょう。
しばらくするとホテルの重役が仲介に入り、その場は収まります。
受付の人や他の従業員に話を聞くと、害虫駆除の業者について説明を受けます。
受付が終わった後それぞれの部屋へ行き、荷物などを置いたところで目星をすると
部屋の隅に蜘蛛がいることに気づきます。蜘蛛はすぐに影に隠れてしまい、退治することは出来ません。
廊下に出れば業者の人を見つけることが出来るでしょう。
彼らは、オーナーから大量発生した蜘蛛を駆除してほしいと頼まれたことを話してくれます。
さらに交渉技能に成功すると、ロビーで揉めていた件を話してくれます。
どうやら従業員の一部が駆除に反対してくるらしく、その理由は神様が怒るからといった内容であるそうです。
2.ホテルの夜
探索者たちが寝静まった深夜、幸運ロールを行います。
失敗すると激痛を感じて起きることが出来るでしょう、何者かに足を噛まれたような痛みです。
電気をつけて傷口を見て見ると、皮膚の一部が1cmほど浅く抉られていることに気付きます。耐久力-1の傷です。
起きてすぐに目星-20%の判定に成功すると、虫が逃げていくところを発見できるでしょう。
この虫は、部屋にいた蜘蛛ですがそのことは探索者にはわかりません。
3.地震発生と従業員の死
朝7時頃、突然地震が起こります。
ホテルは倒壊しませんが、部屋の中は物が倒れたり散乱したりと大変な状況です。
ニュースを確認するとどうやら局地的なもののようで、
さらにしばらく待つとホテル側から土砂崩れにより道路が塞がれ、現在帰宅が出来ないと報せが入ります。
ロビーに行くと宿泊客がフロントに詰め寄って騒ぎになっています。
そんな中、従業員が業者に対して大声で喚いています。
他の従業員に取り押さえられる彼は、突然叫びだし床にのた打ち回ると痙攣をした後、突然腹部が破裂します。
そして何百匹、何千匹の虫が腹から飛び出ると四方に散っていき、どこかへ隠れてしまいます。
この従業員の悲惨な死を見てしまった探索者は1D3/1D6ポイントの正気度を喪失します。
さらに腹から出てきた虫に対して目星に成功すると、それが蜘蛛のような形であることがわかります。
【探索】
・死体の調査
死体についてを調べる場合、すぐに行動しなくてはホテル側に片付けられてしまいます。
観察した場合、従業員は40代後半の男性で制服に「加藤」と書いてあるのがわかります。
医学に成功すると明らかに内部から破られたような傷口であることがわかります。
従業員に話を聞くと、彼はここ十数年ずっと悪夢に苛まれており、精神的に参っていたことを話してくれるでしょう。
交渉技能に成功するとホテルの裏にある社員寮に住んでおり、毎晩暴れていたことも話してくれます。
・雛の侵入
死んでしまった従業員、加藤の部屋へ行こうとすると、アイホートの雛が探索者の体に侵入してきます。
アイデアに成功するとそれを未然に防ぐことが出来、蜘蛛を捕まえることに成功すると雛であることがわかります。
それは白い体をしていて1cmほどの大きさです。足と思われるものは10本あり、いずれも先が2つに割れています。
ふさふさとした触覚の上には目が7つあり、なんとも奇妙な生き物であることがわかります。
アイホートの雛を発見した場合、1/1D4ポイントの正気度を喪失します。
アイデアに失敗すると雛によって体をコントロールされてしまいます。
以後体を使う技能と調査系の技能に-10%の修正を加えてください。
・加藤の部屋
加藤の部屋へ行くには社員寮があること、名前を知っていることが条件です。
彼の部屋には鍵がかかっています。鍵開けに成功するか、もしくは従業員から鍵を貰ってください。
どうしても入れない場合は、アイデアに成功した場合地震の影響で窓が割れている可能性に気付くことが出来ます。
彼の部屋はきちんと整頓されてはいるものの、壁や床などに修復の後が見られます。
ここで調べられるのは、机と引き出しだけです。
机の上には詰まれた本などの一番下に遺書があります。後述の「遺書について」を参考にしてください。
引き出しの中は物が乱雑に詰め込まれているように感じるでしょう。
目星に成功すると引き出しの奥に丸め込まれた紙を見つけることが出来ます。
この紙には呪文が殴り書きされています。詳しくは後述の「呪文の紙について」を参考にしてください。
・遺書について
遺書を読むために10分の時間を要するものとします。遺書の最後に書いてある付言を読むことが出来ます。
「付言 私はあの日以来、心を患ってしまいました。
あの日私はとても非現実な出来事を体験しました。私だけでなく、他の同僚も同じように。
一体あれがなんだったのか検討もつきません。私以外の人間は覚えていないようだったので、妄想なのかもしれません。
しかしとても恐ろしい化け物でした。私は生き残りたいがために化け物と契約を結んだのです。
それ以来毎晩のように悪夢を見続け精神は疲弊し、日中でも不吉な囁きが聞こえるようになり、苦しみました。
同僚らも心を患い次々と自殺をし、そうでなくとも悲惨な死に方をしたと聞いています。
私も恐らくそうなってしまうのでしょう。日に日に私が私でなくなっていくような感覚です。
完全に自分が失われてしまう前に、この遺言を書かせていただきます。」
心理学に成功すると、落ち着いてはいるものの急いで書き留めたものなのではないかと思うでしょう。
雛にコントロールされている探索者は、これを読むとショッキングな映像が脳内を過ぎり書かれた内容に恐怖を覚えます。
あの日の出来事については、「過去に起きた事件」を参考にしてください。
・過去に起きた事件
ホテルで起こった過去の事件について調べる場合、インターネットを閲覧できる媒体がないと調べられません。
図書館、もしくは探索者が提示した技能を使い、成功すると以下のことがわかります。
「某グランドホテルにて宿泊客が自殺。
被害者は突然奇声をあげ呻きだすと、腹部を切られて死亡していた。
他殺とも思われたが周囲の人々は怪しい人物を見なかったとして自殺と断定した。」
アイデアに成功すると、これは実際に起きたことを捻じ曲げた文章であり、
恐らく宿泊客は従業員と同じように死んだのだろうと思います。
さらに幸運や目星などに追加で成功すると、事件の詳しい話を掲示板から見つけることが出来ます。
「某グランドホテルの事件は、本当は自殺ではないらしい。
ただとても奇妙な死に方で、たくさんの虫が腹を食い破って出てきたようだ。」
「その虫というのは蜘蛛で、ホテルはすぐに害虫駆除を頼んだけど、凄く奇妙な形の蜘蛛だったらしい。」
「隠蔽して表沙汰にはしていないが、ホテルに勤めていた従業員もその後次々同じような死に方をしている。」
「あの事件の関係者は何故か自殺しているらしい。毎晩悪夢を見ていたらしい。」
アイデアに成功すると、過去に起きた事件と現在の状況が類似していると思い、
あの従業員の末路は後の自分たちなのではないか?という考えに至り0/1ポイントの正気度を喪失します。
・呪文の紙について
丸め込まれた紙を読み、理解するために10分の時間を要するものとします。
紙にはカタカナで不思議な文字が羅列していますが、次第に文字が踊り乱雑になっていきます。
心理学に成功すると途中から妄想などにより精神が不安定になったのではと予想出来ます。
この文字を読むには日本語-10%に成功する必要があり、
さらにオカルトに成功するとこれが呪文の一種であることがわかります。
この呪文を覚えるためにはINT×2の判定に成功した上で15-INT日間の期間が必要ですが、
紙を持っている場合は無条件で詠唱できるものとします。
詳しくは「雛の追放の呪文」を参考にしてください。
・雛の追放の呪文
この呪文を詠唱するには3ラウンドの時間と、参加者それぞれ1D3ポイントの正気度をコストとして支払う必要があります。
参加者一人につき1マジック・ポイントを追加することが出来ます。
投入されたマジック・ポイントの合計と、雛を植え付けられてから過ぎた日数を抵抗表に従ったロールで競わせます。
呪文が勝った場合雛は犠牲者の体から出てきますが、その時1D3ポイントの正気度を失います。
そして犠牲者は寄生されていた日数分の耐久力を失います。
・土砂崩れの調査
土砂崩れについてを調べる場合、移動に時間がかかることを忠告しておきましょう。
現場まで行くと、確かに越えることは出来そうにないことがわかります。
ここで聞き耳に成功すると、地中から僅かに詠唱するような音が聞こえます。
さらに幸運に失敗し、目星に成功すると、土砂の中でなにか触手が蠢くのがわかります。
探索者にはわかりませんが、これはアイホートが召喚したクトーニアンの一部です。
見てしまった場合、1/1d3ポイントの正気度を喪失します。
・悲鳴とドッペルゲンガー
宿泊室の廊下を歩いているときにどこかの宿泊室から悲鳴が聞こえます。
聞き耳に成功するとどの部屋なのかがわかり、部屋の前まで行くことが出来ます。
しかし室内を調べるためには鍵を開けなければなりません。従業員を呼ぶか、鍵開けに成功する必要があります。
この時幸運を振り、成功すると室内に体の一部が欠けている死体を発見します。1/1d3ポイントの正気度を失います。
死体にはいくつもの抉られた痕があります。夜に傷を受けていた場合、アイデアに成功すると同じ傷であるとわかるでしょう。
幸運に失敗するとその部屋には誰もいなく、0/1ポイントの正気度を失います。
しかし部屋を離れた後、しばらくするとその部屋から人が出て行きます。これはアイホートの雛の集合体です。
詳しくは「アイホートの落とし子」を参考にしてください。
・アイホートの落とし子
シナリオの後半、アイホートの雛たちが何人かの宿泊客に成り済まして探索者たちの邪魔をしてくる場合があります。
アイホートの落とし子の肌は死人のように青白いですが、普通の人間のように見えます。
ただし、彼らは体毛が無いため常に帽子やフードなどを被り頭を隠しています。
探索者たちがまだ従業員の部屋を調べていない場合、先に呪文の書かれた紙を始末しようとしてそちらへ向かいます。
もしも追いかけた場合、部屋の前で遭遇するでしょう。声をかけると逃げていきます。
探索者たちがすでに部屋を調べ、紙を入手していた場合は落とし子のほうから紙を渡すように話しかけてきます。
ここで申し出を断ると戦闘になります。ただし一度でも攻撃を成功させダメージを与えると、落とし子は逃亡します。
探索者たちが部屋の中にいる場合は、部屋の中に入れなければ戦闘を回避できます。
参考:湖の隣人の小屋
・怯えた者の末路
事態に恐怖し、自室にこもることを選んだ探索者に対して行われるイベントです。
しばらく時間が経った頃に、アイデアロールを行います。
成功すると、蜘蛛が部屋を歩いているのがわかります。
それでもまだ部屋から出なければ、再度アイデアロールを行います。
成功すると、部屋の至るところに蜘蛛がいることがわかります。
まだ部屋から出ないようであれば、探索者の足元に無数の蜘蛛が集まってきます。
探索者は1D3/1D6ポイントの正気度を喪失し、幸運に成功すると部屋から無傷で逃げることが出来ます。
失敗すると蜘蛛たちに体を噛まれ耐久力-1d6の傷を負います。
この時もう一度幸運を振り、失敗すると探索者は蜘蛛に体を齧られ死んでしまいます。
【結末】
早朝の儀式
翌日、静まり返ったロビーに数人の従業員や宿泊客が集まって全員で呪文を唱えています。
この光景を目撃した、雛にコントロールされている探索者はSANチェックをし、失敗するとその詠唱に加わってしまいます。
探索者たちが彼らを止めるよりも先に詠唱は完了します。そして、ホテルのロビーにアイホートが出現します。
アイホートの出現により雛たちは小型のアイホートへと姿を変え、ホテル中に蔓延ることになります。
もしも探索者たちが朝のロビーにいない場合は、この小型のアイホートを近くに出現させてください。
そしてホテルからの脱出を促し、ロビーに集合させ、親のアイホートのいるロビーまで誘導してください。
アイホートを見た場合3ポイントの<クトゥルフ神話>を得、1d6/1d20ポイントの正気度を失います。
雛にコントロールされている探索者はさらに1d3ポイントの正気度を失います。
選択肢
ロビーの壁をも壊しそうな大きさのアイホートは瞬きのない目を探索者たちに向けています。
その場にいた者たちはアイホートに押し潰されたか、この蒼ざめた怪異を見て正気を失っています。
アイホートは探索者たちに近づきテレパシーを送ってきます、それは契約するかしないかというものです。
断れば探索者は肉のついていない足で強打され、死んでしまいます。
受け入れた場合、探索者は体内にアイホートの雛を埋め込まれることになります。
悪夢の始まり
契約をした探索者たちは強烈な悪夢によって目を覚まします。
そして到着した救助隊に助け出され、ホテルから離れることになります。
アイデア1/2に成功すると、アイホートと契約したことを思い出し、雛を追放する方法を考えるでしょう。
1d100ヶ月に雛を体内から追放しなければ探索者は死んでしまいます。
【シナリオ終了後のSAN回復】
契約をして生き残っている場合1d3、更に呪文の紙を手に入れている場合1d6のSAN回復が出来ます。
【その他舞台設定】
某グランドホテルは、名前などは決めていません。自由に考えてください。
自然豊かな景勝地に建っていて、客室からは美しい風景を眺められると評判です。
交通の便は良いとは言えませんが長期休暇を利用して羽を伸ばしに来る客は多いようです。
一階にはロビーとレストラン、パーティー会場などの設備があり、二階と三階は宿泊室になっています。
階段で地下に降りると温泉があり、露天風呂などはとても人気のようです。
ホテルの傍には泊り込みで働く従業員の寮があります。
事件のあと、一部の宿泊客は怯えて部屋にこもってしまってます。
一部の従業員はアイホートの雛に寄生されコントロールされてしまっています。
彼らは探索者たちに蜘蛛を殺さないように忠告してきます。
【最後に】
実際のセッションでは「受胎告知」のリプレイのように異種姦しました。
次作るシナリオはきちんとホラーっぽくしたい。
素材:青の朝陽と黄の柘榴